上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ただ目の前を通り過ぎる、車の流れを眺めていた。
夜11時を過ぎても車が絶えないR10。通りに面したPC2で今、殆ど生気を無くし、半ば死にかけた様に店の前に座り込み、壁に寄りかかっていた。
何か食べなくてはと思うが、既に胃が拒絶反応を示しており、冷たいアイスくらいしか喉を通りそうに無い。
他のランドヌール達は、しっかりと食事をしており、とても羨ましい。食べられなくなった時が終わりだ…そんな声が遠くから聞こえてくる様だった。どのくらい経ったのだろうか、ここで眠る訳にもいかず、何処か休める場所を探す為、再びルートに戻ろうとしていた。
R10の右側にあるPCからは、道路を渡らなければスタートが出来ない。目の前をひっきりなしに通り過ぎる車が一瞬途絶えた隙をぬって、リスタートしたのだった。
走り出して直ぐに県道24号へ右折。ここから本当に長いミッドナイトランがスタートした。

海岸線に近いこの辺りは、静かな住宅地の様だった。思えば今日は土曜の夜、もっと早い時間ならば、立ち並ぶ家の明かりの中に、家族の団らんを感じる事が出来たであろうが、深夜0時近くでは、もう殆ど明かりは見えなかった。
それでも、南九州自動車道をアンダーパスする迄は、人の営みを感じる景色であったが、やがて風景はもののけ達が支配する世界へと変貌して行った。

喉の渇きは癒すのは、もう水だけにしていた。あれだけ好んで飲んでいたスポーツ飲料が、実は胃にダメージを与えていたのでは無いかと考えていた。しかし、この時なぜか急にコーラへの欲求が高まった。理由は分からない。
身体が欲する物イコール体内から欠如したものでは無いのか。コーラのあの甘い喉ごしを求めて、何度となく自販機に立ち寄り飲み干したのだった。きっと糖分が欠如していたのだろう…

走りはじめて30km、左手に大きなダム湖が見えだした。一ノ瀬ダムだ。ここ迄走ってくる間に、仮眠出来そうな施設は無かった。ブリーフィングで確認した屋根付きのバス停は、まだ先なのか…

深夜の山間の道は、とても不気味である。ヘッドライトに照らされたオブジェクトが、一瞬怪しげなものに見えてしまう。その瞬間全身に鳥肌が… あるはずのない人や物に見えてしまうのだ。
もう、いくつものトンネル、コーナーを抜けた事だろう、終わり無く続く深夜の山道。自分では、そこそこスピードを出しているつもりだが、実際には非常に遅いペースであった。夜は、速度感覚が麻痺するらしい。

あるコーナーに差し掛かった時、灯が見えた。宅配便の看板と自販機そしてベンチ。ここで、休憩するか。
冷たい水を飲みながら、もう頭の中では、人吉でのDNFが明確な予定となっていた。夜が明けたら、この長いサイクリングも終わりだ…

午前2時半、ブリーフィングでも案内があった、仮眠候補地の川の駅が見えて来た。
入り口前の売店に自販機とベンチが並んで、先客のランドヌールが1名座って休憩していた。
今夜の宿はココにするか。バイクを停めて、とりあえず自販機で買おうとした時、先客よりホットは品薄との声。
ホット?、さっきまで走っていた俺は、勿論冷たい飲み物を買ったのだが、この時思いのほか気温が低かった事に気づいて無かった。ランドヌールと次のPC迄の距離を確認した後、売店横の軒下のベンチで仮眠した。

寒い!!、汗をかいた体が冷えて、本当に寒い。ベンチに横になっていたが、寝るに寝られない。だがじっと我慢していると、昼間の疲れのせいか、やがて意識が遠のいていった。
どのくらい経っただろう、ふと時計を見ると3時半だ。約1時間は寝た様だ。
やはり、睡眠は最善の休養だ。とても浅く短い、眠ったか眠らないかの睡眠であっても、目覚めた後は、随分疲れがとれていた。冷え切った体は、走り出せば直ぐに温まるだろう、これからPC前の最後の登りに入るのだから…

そう言えば、この道は鹿が出ると聞いていたが、ここ迄見かけはしなかった。だが、もうすぐ峠というところで、闇夜に光る青い二つの目。鹿だ!!ヘッドライトをその方向に照らすと、そそくさとそいつは道路より立ち去った。
さて、仮眠リスタート後、ずっと登り続けた道もいよいよ終わりを告げようとしていた。とその時、前方に突然照明に照らされた構造物が…、最初それが何か巨大な船の様に見え、何でこんな所に船が?異次元に迷い込んだ様で、またしても全身に鳥肌が…
近づくにつれ、ようやくそれが「横谷トンネル」の入り口である事が分かった。

トンネルを抜けると、一気に下りとなる。暗闇に支配されていた山道は、もうすぐ太陽にその座を明け渡そうとしていた。徐々に明るさを取り戻し、おどろおどろしかった山が、次第に清々した風景に変わって行った。
人はやはり自然の一部である。日の出とともに活動し、日没とともに休むのが人の体にとって一番適しているのだと思う。だから、朝とともに、何故だか少しずつ元気になって来て、あれほど決めていたDNFを、もう少しだけ走ってみようかという気にさせた。



■ PC3 (361.4km) Result:04:55/Close:07:08

何故かサイコンの誤差が約1kmある。その間、もしかしたら異次元を彷徨っていたのかもしれない…
さてこの後は、いよいよ最終章、灼熱の最終日へと続く…



関連記事
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://cyclistar50.blog.fc2.com/tb.php/162-373b99e3
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。